「なんか渚、元気なくない?」
砂浜で声を掛けてきたのは、南くんだった。
南くんとは、告白の一件から口をきいていない。どこか気まずくて距離を置いている。
私が答えないままでいると、その視線は海辺へと。
はしゃぐ2人はラブラブだ。
「あの2人、付き合い始めたのかな?」
「さぁ?」
「だから元気ないの?」
「いや、寿命があと1日なんで」とは言えず、曖昧に首を振った。
それを肯定だと捉えたのだろう。
「やっぱり、俺じゃダメかな?」
大きな体を、自信なさげに折り曲げる。
私はしばらく、ぼんやり南くんを見つめた。
たぶん、こういう人と付き合えば幸せなんだろう。とても大事にしてもらって、暖かい日々を送れる。
でも__。
「__ごめん」
「まだ裕也がいいの?もう優衣と付き合ってるのに」
「それは__」
「俺のほうが渚のこと幸せにできる‼︎」
「やめて‼︎」
「俺にしろって‼︎」
覆い被さるように迫ってきた南くんが、強引に私の腕を引き寄せ__キスをした。
「嫌っ‼︎」
思いきり突き飛ばし、砂浜に尻もちをついた南くんから、走って逃げ出した。
誰があんたなんかと‼︎
【寿命】をくれるのなら別だけど__。



