「ふぅー。間に合ったぁ」 暖房の効いた車内。 紗枝は、亮太といつも座る一番うしろの席にドカッと腰を下ろした。 微妙な距離を開けて、俺も紗枝の隣に座る。 「……直樹くん、もうちょっとこっちに来ないと……」 「えっ?」 紗枝が目配せした方を振り返る。 見ると、俺の隣に二十代後半くらいの女の人が、遠慮がちに、そして狭そうにちょこんと座っていた。 その人に「すみません」と小さな声で謝り、紗枝の方に身体を寄せる。 制服越しに、俺と紗枝の身体がぴたりとくっついた。