「……お子ちゃまじゃん」 どんなに愛しくても。 たとえば俺が、好きだと言ったとしても。 決して、手の届かない彼女――。 「おい、紗枝ー?」 先にバスに乗った亮太が紗枝を呼ぶ。 紗枝はいつもの明るい笑顔で、亮太が座る一番後ろの座席へと向かった。 「直樹くん、早く乗って?」 バスの乗車口の前で立ち尽くす俺を、後ろで亜紀ちゃんが急かした。 「あ、あぁ、悪い」