急いで部屋に向かったのはいいけれど。 ベージュ色のドアの前。 このドアをノックすることもできなくて、俺はただ突っ立っているままだった。 十分という約束だった。 だけど……。 気を利かせてやるのが、優しさってもんじゃないのか? どうする。 どうするよ、俺。 ひんやりと冷たい空気が充満している廊下。 寒くて、しだいに俺の身体はガタガタと震え始める。