恐怖で、一度落ち着いた心臓が暴れ始める。


「………」


目の前の男は、私をジッと見つめ、次の瞬間私のロングコートの袖を乱暴にまくりあげた。


露になるアザ。


痩せすぎた腕。 


「虐待とかDVとかそんなところか。んで、逃げてきたわけだ?」


男は、乱暴にまくりあげた袖を、丁寧におろしてくれた。


図星を突かれた私を嘲笑うかのように、月光が輝きを増した。


雲ひとつない今夜。


煩わしい月光が消えることがない。


「あんたのとれる選択肢は2つ。俺についてくるか、ここに残るか。俺は何もしない。ここに残れば不良たちがお前を襲うだろうな」


私は月光に照らされて醜くなるのに、この男は美しい。