「……そ」


叶翔さんが小さく言ったあと、微かに月光が伸びてきた。


光が弱くて反射しないまま、また雲に隠れてしまった。


ヒューっと冷たい風が吹く。


「寒…っ」


コートを着てても寒い。


「……帰るか。今日は付き合わせて悪かったな」


叶翔さんがサッと立ち上がる。


楽しかった時間ももう終わり…。


それがとてつもなく寂しかった。


帰りたくない。


ずっとこうして叶翔さんの側にいたい。


だけど、それを伝える勇気なんて持ち合わせてない。