美味しそうなムール貝を運んで来たのは、アランではなかった。 アランより体格のいい彼は、アランよりも女性に慣れていた。 電子辞書を見つめる聖に甘い言葉をかけた。 私にはわからないけど、「かわいいね」と声をかけたらしい。 クールな聖も、まんざらでもなさそうに頬を赤らめた。 まだアランのこと、何も知らない。 でも、何となくわかる。 純粋そうな表情。 軽く声をかけたりできない真面目な人。 私は厨房から時々顔を出すアランに夢中だった。 フランス語を話したいと思った。 彼と話がしたい。