ホームルームが終わると「どっか寄って帰ろう」と、みんながぞろぞろと帰りはじめる。

私がずっと寝ていても誰も気にしない。たまに自分は透明人間なんじゃないかって錯覚しそうになるけど、透明になれたらこんなに必死で傷痕を隠したりはしない。


ぼんやりする感覚は校舎を出てからも続いていた。

身体は熱が籠ったみたいに暑いし、歩いているのに足が浮いている感じがする。


――と、その時。視界に一際眩しい金髪が見えて「あ……」と声を出したのは私じゃない。


ああ、やっぱり大きいな。

横をすれ違う男子よりも頭ひとつ飛び抜けているし、なによりオーラが違う。

怖さだったり冷静さだったり、見た目は不良なのに妙に落ち着いてるから大人っぽさがより際立つ。


……そういえば昨日は先輩とか呼ばれてなかったっけ?

ってことは年上だよね。明らかに同級生には見えないし、制服を着てなかったら学生には思えない。


あれ、なんで私こんなこと考えてるんだろう。

この人のことなんてどうでもいいし、私の嫌いな男なのに……。


「え、お、おいっ」

何故かヒロが慌てている。

目の前にいるのに、その声はやけに遠く感じて、気づくと私の視界は真っ白になっていた。