って、こんなことで時間を使ってる場合じゃないでしょ。
私はなんのためにここに来たの?
愛夢の伝言を伝えるためでしょ!
頑張れ心織!
恥ずかしさに負けちゃダメだ!
「あ、あの、慧先輩...っ!」
また噛んだ...!!!
もうなんで私ってこうなの!?
緊張しても恥ずかしくても堂々と話せるようになりたいのに!!
「なに?」
笑いながら私のことを見た慧先輩は、青空が良く似合う。
こんなにかっこいい先輩と愛夢が関わりを持っているなんて、一体どこで出会ったんだろう。
って、また私は関係ないこと考えてる!
「えと、愛夢がさっき帰ったんです」
「愛夢が?」
慧先輩の顔から笑みが消える。
何かを考え込むように、慧先輩は手に顎を乗せた。
なにをしたってかっこよく見えるんだから、イケメンって凄い。
私も美少女に生まれたかったなぁ。
とんでもなく今更だけど。
「...あ、心織ちゃん...だっけ?伝えてくれてありがとう」
「えっ、いや、はい!あ、だ、だい、大丈夫です!」
いや私何言ってんねん!!
どもりすぎでしょ!!
最高に恥ずかしい。
クスクスと慧先輩はまた笑う。
笑われてるじゃん私!
もう何やってんだろ。
「...あ、昼休み終わっちゃうからもう帰った方がいいよ?」
慧先輩は時計を指さした。
「わっ本当だ!!それじゃあ私はこれで.....あっ!」
もう一個伝言あったんだった!!
「あの、愛夢が明日は学校休むそうです!」
「休む...。そっか、分かった。ありがとう」
優しく微笑んだ慧先輩に、私の心臓が悲鳴をあげる。
なんで愛夢はこの人が隣にいても平然としていられるんだろう。
私なんてずっと緊張しているのに。
私はペコリと頭を下げて屋上から出た。
走って教室に向かう。
愛夢がいない学校なんて、楽しく、ない。
「...明日、休みたいな.......」
私の言葉は静かな廊下に響くことなく消えた。
心織side end