過保護な父親なんて持ったことないからほんとうにそんなこと言われるのか分かんないけど!!!



「愛夢ご、ごめんね!!こんな時間まで!」



なんであたしよりあんたが焦ってんの?!



「別に大丈────」



「大丈夫じゃないよ!!親も心配してるだろうし!!連絡してなかったよね!?」



「いや、だから本当に────」



「ううん、今からでも遅くない!とりあえず愛夢は連絡して!?俺はバイクの鍵取ってくるから!」



話聞けよ!!!



慧は元いた部屋に入って行った。



だいたい連絡って言ったって、連絡する人なんていないし。



とりあえずあたしは詮索されないように、スマホを取り出した。



すぐに慧が部屋から飛び出してきて、あたしの手を取った。



「愛夢!今から帰るよ!」



「えっ...」



返事をする間もなく、慧が走って階段を降りる。



足がもつれそうになりながら、あたしも階段を駆け下りた。



「愛夢!家どこ!?」



慧はあたしを軽々しく持ち上げてバイクに乗せた。



家...は別に言ってもいいよね。



多分これ言わないと返してもらえないタイプのやつだし。



「.........さっきのコンビニの近く」



出来ることならコンビニで降ろして貰いたい。



でもきっとこの焦りようじゃ、絶対無理だと思う。



両親に会って謝らないと!とか言いそう。



なんとしてでも家の中には入れないようにしなくちゃ。



そもそもあたしが何階に住んでいるのかもバレないようにしないと。



「ここからどうやって行くの?」



「......ここでいい」



「ダメだよ!もう夜遅いんだから!」



「ここから家まで5分くらいだから」



「でも...!」



「ほんとに大丈夫だから。家まで来られても迷惑。」



「............じゃあ、気をつけて帰ってね?もう11時過ぎだし。」



何から気をつければいいんだろう。



さっき言ってた白帝の敵とかいう人?



5分の距離で来るの?



「.........うん」



絶対わかってないでしょ...って顔してるけど気にしないでおこう。



「愛夢!明日は学校行く?」



「まあ行く......けど、なんであたしが今日休んだこと知ってんの?」



「あー...、俺も同じ高校だから?」



「.........そう。それじゃ」



なんで疑問形なんだろう。



っていうか、同じ学校だったんだ。



「愛夢、また明日」



「..................うん」



また明日、か...。



あたし、なんでこんなことになってるんだろう。



家までの5分間、あたしはそんなことを考えて歩いた。



一人静かな部屋で、これからのことを考える。



なんであんなに人と関わることになった?



これからは静かには暮らせないのかな。



あたしに、静かに暮らせる日は来ないのかな。



白帝っていうところで、何か変わるのかな。



変わるって、なにが変わるんだろう。



あたしに変わることなんてあるの?



「はぁ...やめよ。」



それだけこぼして部屋着に着替える。



テーブルの上に置いたビニール袋を見て、あたしはまたため息をつく。



せっかく買ったけどもう喉なんて乾いていない。



明日学校に持っていこう。



冷蔵庫の中に袋ごと買ったものを入れた。



ベッドに横になり、スマホを充電器に繋いで目を瞑った。



気づけばあたしは、深い眠りについていた。