「お嬢様、ここへいらしたということは、私の書いた手紙をご覧になられたのでしょうか?」 「ええ」と、頷いた。 「そうですか…もしもという一縷の望みで書き置きましたが、本当に見つけていただけるとは……」 言って、目尻を指先で拭うリュートに、 「……あなたが何か残していってくれたものはないかと思って、部屋を探したのよ」 そう返すと、 「わざわざ探していただくなど、私としても嬉しい限りです……」 と、リュートは胸に片手をあてて、かつてと同じ優雅な所作で頭を垂れた。