コトコトと野菜たっぷりのスープを煮る音が聞こえてきて。
少しだけ沈黙が走る。
すると
蘭君がイスから立ち上がって、深いため息を吐いた。
「これがあんたと鈴のやりたかった家族ごっこってやつか?」
さっきとは打って変わって、愛想のカケラもない。
突然雰囲気をガラリと変える蘭君を見て、動揺を隠せないお母さんは、コトコトとうるさいスープの火を止めた。
「蘭...急にどうしたの?」
「そうだよ兄さん、何怒ってんだよ急に」
焦り始める2人は、蘭君のご機嫌を取ろうと必死だ。
だけど蘭君は、テーブルに置いてある調味料を手に取って、ごちそうに無差別に振りかけた。
「なにするの蘭!!」
それを見て怒る母親。
蘭君は構いやしないと、調味料を使い切ると
見た目がひどくなったごちそうを、母親の目の前に差し出した。
「食えよ」
「ーーーっ!?
何言って...、食べれるわけないじゃない...っ!!」
「ああ、俺も同じだ。
あんたが俺のためだけに、こんなごちそうを作ったって考えるだけで食欲が失せる」
「なっ...!?」
「あんたさ、バカだろ?
俺が何にも言わないからって、勝手に許されたと思って。
なんでそんな簡単に笑えるんだよ、俺の前で」
「...」
「一緒に住む?冗談じゃねえ。
ほんと呆れる、なんでこんな奴と血が繋がってんのか...」


