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「兄さん、心の準備はいい?」



放課後、鈴君と蘭君に挟まれながら歩く夕暮れの道は
歪な関係を真っ赤に染めて目立たせていた。



嫌な時間はすぐにやってきて、そこからが長い。



進めば必ず着いてしまう鈴君の家に...いや。
蘭君のトラウマの元に戻ってきてしまった。



「蘭君...」

「大丈夫だ、彩羽」

「...」

「大丈夫だから」



そう言って、長い脚で自ら踏み込む辛い世界は、一体これからなにを物語るのか。


鈴君が家の鍵を差し込んで、私達を家の中に入れてくれた。



「おじゃまします...」と、私は言うけど。

蘭君は口を閉じたまま、靴を脱いだ。



家族から他人になって、また家族になるって
どういう心境なんだろう...?


もし私が大好きなお母さんに捨てられたら
多分...もう生きていけない。



なのに蘭君はそんな母親を許そうとしてる。



やっぱり...理解できないよ。