【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。





ーーーバキッ!!と。
店内のBGMと重なる鈍い音が、耳の奥で響いた。



鈴君がその場に勢いよく尻もちをつく。


悲鳴をあげるお客さんの目の前で、蘭君はしゃがみ込んで怒り任せに鈴君の胸ぐらを掴んだ。




「昔のことを掘り返すのはまだいい、俺が無視すれば終わる話だからな。」


「...」


「だがな、ようやく見つけた俺の居場所を...彩羽をまた侮辱(ぶじょく)してみろ。
テメェ本気で殺すぞ」


「...っ!?」



全部を背負って生きてきた蘭君の目は、本気だった。


これにはさすがの鈴君も黙り込むしか逃げ道はない。


蘭君が鈴君の胸ぐらパっと離して、立ち上がる。




「彩羽、行くぞ」

「...うん」



店から出ていく蘭君の背中を追った。


鈴君のことが気になって、ドアの前でピタリと立ち止まり振り返ると
彼は店員さんに声をかけられても床に座ったまんま、俯いていた。



そんな鈴君の姿を見ていられなくて
逃げるようにお店から出た。