正気とは思えない言葉の数々に、蘭君は呆れて物も言えないみたいだ。
それは蘭君の過去を知っている私も同じで、開いた口が塞がらない。
戻ってきてほしい?
蘭君の前からいなくなったのは、そっちの方じゃん。
また一緒に暮らそう?
蘭君のお父さんが亡くなって、葬式にも蘭君を迎えにも来なかったくせに
今更すぎるよ...バカじゃないの。
「鈴君は...勝手すぎるよ。
蘭君が今までどれだけ辛い思いをしてきたか、分かってて言ってるの?」
我慢できずに、二人の会話に割って入る。
さっき食べたポテトについてる塩のせいで、喉はカラカラだ。
「...彩羽先輩には関係ないでしょ?
彼女だからって口出さないでよ。」
「...っ」
「それに、大好きだった母さんに裏切られた兄さんが、人を愛せるわけがない。
彩羽さん、遊ばれてるんじゃないの?」
フッと見下したように鼻で笑う鈴君の言ってることは、あながち間違ってない。
それでも...
蘭君はちゃんと、私のこと好きになってくれたもん。
鈴君に何がわかるの?
グッと怒りを堪えていたせいで、無意識に噛んでいた唇から血が垂れる。
もう我慢の限界だ。
拳をグッと握って、鈴君を殴ろうとしたとき。


