グイッ!と予告無しに蘭君に引っ張られたせいで、コンクリートにハンカチを落としてしまった。



「んっ...っ、!」



いつもより激しいキスに息が上手く吸えない。


なんで急にキスなんかするの、蘭君のバカ!!




「...なあ、」


「...?」



くっついていた唇を離して、息が乱れて余裕のない私に



「ファーストキスって、お前。レモン味だったか?」


よく分からないことを聞いてくる蘭君は、雰囲気を壊すのが上手な男だ。




「そんなの...っ、忘れた」


「あの時、お前の初めてのキス無理矢理奪っといてよかった」


「...っ」


「お前の初めてが俺でよかった」



言いながら、もう一度深いキスをしてくる蘭君。



なんでそんな急に...目の前がチカチカとするような甘い言葉を言ってくるのかなー...。


これ以上蘭君に骨抜きにされたら...わたし、何が残るんだろう。



「蘭君...」


「...?」


「すき」


「...っ!?」


「だいすき」



へらっと笑いながら言うと、蘭君のキス攻撃はこれでもか!ってくらいに激しさを増す。





もう何度目だろう。蘭君とキスするの。



数える余裕なんてないけど...


今してるキスの味は色気のない、血の味がした。



ファーストキスじゃなくても...レモン味なら、よかったのにね。