大変だ


心が撃ち抜かれすぎて、ライフポイントがもう残っていない...っ!!



夏の暑さと蘭君の甘さに耐えきれなくなってアパートまで全力疾走。



後ろから聞こえてくる蘭君の声を無視しながら走る坂道は
ミーンミーンと鳴き始める蝉の声に負けてないくらい、うるさかった。



家に帰る間に起きた、ちょっとした青春。



アパートに着いてすぐ自分の部屋のドアを開けると
満面の笑みでお母さんに抱きしめられた。


ちょうど仕事に行こうしていた頃に、私が帰ってきたみたいだ。




「ちょっ、お母さん...っ」


「おかえりー!彩羽!!」


「仕事なんでしょ...?
早く行かないと...っ」


いつもは仕事、夕方からだけど。
今日は時間をズラしてもらって、お昼からって言ってたから油断してた。



まさかまだお母さんが仕事に行ってないなんて。


どうしよう。

蘭君が部屋に来る前に、お母さんに仕事行ってもらわなきゃ。




「ごめんね彩羽。
せっかくあんたが退院した日なのにお家に居れなくて...」


「大丈夫だよ!
私もう子供じゃないんだし。
それにただでさえ貧乏なのに...入院費とか色々、ごめんね?」


「そこは気にしないでよ〜!
あんたの為に使うお金なら、なんとも思わないから!!
じゃあ今日も元気にお仕事行ってまいります!!」


「うん」


「あっ、今日は早く帰ってくるから!
退院祝いにいっぱい美味しいもの作るね!!」


「別にいいのに...」

「子供が遠慮しないの!!
じゃあね!!」