「あの子生きてたんだ...よかった」
ホッと胸を撫で下ろした数秒後。
空気が、ピリッと変わる。
「よくねえよ」
「ーーーッ!!」
ーーーバンッと乱暴に開かれたドアと同時に
聞こえてきた言葉は異様に冷たく、ホッとした私の体をすぐに強張らせた。
真っ白な病院に現れた、今にも人を殺めてしまいそうな黒い悪魔。
いつもと違う蘭君の姿に、心が...ひどくザワついた。
「蘭...」
名前を呼ぶ歩夢さんを無視して、蘭君が私の前に立つ。
蘭君...来てくれたんだ。
どうしよう
久しぶりの蘭君に、ドキドキが止まらない。
りんごのように赤くなる頬は、きっと直前のまやかし。
次の瞬間
ーーーパンッッッッ!!!!!!
「...っ...らっ...」
大きく鳴り響く乾いた音が、数秒後には私の頬にジンジンと振動を伝わらせて、青くなる顔と赤くなる頬。
息の吐き方も忘れてしまいそうなほど驚きすぎて...一瞬、思考が停止した。
なん...で私
蘭君に叩かれたの...?


