窓の外から入ってくる風が病室のカーテンをパタパタと揺して、そのせいで勢いはなくなったけど無理矢理にでも私の頬を撫でてくる。
ベッドから上半身だけを起こして、あっちこっち見てみたけど...さすが病室、汚れを知らない、すべてが真っ白だ。
「あの...なんで私助かったんですか?」
生きてることがまだ不思議でしょうがないから、歩夢さんに確かめるように聞いてみた。
「...ん?駆けつけた救助隊の1人が君を助けたんだよ...。
って言っても、あと1秒でも遅れたら家の中には入れなかったほど、火が家を包んでいたらしい」
「そっかあ...」
"あの時"聞こえてきた声って...救助隊の人の声だったのか。
「なーに彩羽ちゃん。
もしかして死にたかったの?」
「えっ!?」
ニコニコ笑いながら物騒なことを聞いてくる歩夢さんは不気味だ。
どうやらこの人に隠し事は無意味らしい。
「...死にたくはなかったけど...楽にはなりたかったです」
「それは蘭が関係してるの?」
「...」
こくりと静かに頷くと、歩夢さんがため息を吐く。
「最近...蘭の様子がおかしいと思ったら、また喧嘩してたんだ」
「だ...、だって蘭君が!私の気持ち知ってるくせに、他の男の方がお似合いなんてひどいこと言うから...むかついて...」
「...」
「それにもしこの先、蘭君に好きな人が出来て、隣にいるのが私じゃない別の誰かだったら...そんなの耐えられない」
「...」
「見るのも嫌、蘭君が誰かに触れるのも嫌、蘭君の心が誰かのモノになるのが嫌。
考えるだけで苦しいのに...そんなこと現実で起こったら私本当に死んじゃう...」
「...」
「だから急に...死ぬのが怖くなくなったの。
彼女でもないくせに、重いよね、わたし。」
「...彩羽ちゃん...」


