ずっと、夢だけ見て生きていたかったの。
たとえその夢の世界が死後の世界でも...夢を見られるならずっとそこで眠っていたかった。
だけど。
開いた目から見えてくる真っ白な天井。
あれ...わたし、もしかして生きてる?
戻るつもりなんかなかったのに戻ってきてしまった現実に戸惑いを隠せない。
見ていた夢の中で、男の子に首を絞められた時の感覚と、自分が吐いた欲は
夢か現実か分からなくなるくらいにリアルだった。
「彩羽ちゃん...っ!!」
閉じて乾いてるはずの目から、ポロポロ涙を流している私の視界に飛び込んできたのは歩夢さんだった。
なんで歩夢さんがここに...。
「彩羽ちゃん...っ!
よかった...目覚めてくれて」
「...あゆ...む、さん?
あれ...ここどこ?」
「ここは病院だよ。
彩羽ちゃん、燃えてる建物に飛び込んで、男の子助けたんでしょ?」
「...そんなんじゃ...」
「すごい勇気だね。
彩羽ちゃんの友達から聞いた時はびっくりしちゃったよ。
火災現場に居合わせたヒーローだね」
「...」
別にそんなつもりで助けたわけじゃないんだけど。
私が病人だからかな?
気を使って、いつもより子供扱いしてくる歩夢さん。


