「う...っ、っぐぅ...」
「もう...大丈夫だから。」
声にならない声で泣く男の子は、涙と一緒に鼻水で私の肩を濡らす。
恐怖で震えが止まらない男の子を少しでも安心させようと、背中をさすって抱き上げた。
ーーーが。
敵は、一時的な安心さえ与えてくれないみたい。
次の瞬間。
ーーーバンッ!!!!と鳴る、ものすごい爆発音と共に吹っ飛ばされて、熱風が私と男の子を引き離した。
「ぐっ...!!」
「お姉ちゃん...っ!」
手を伸ばせば届く距離にいる私たち。
でも。
やっと助けることが出来たのに、なんでこんな時に足が動かないの...。
絶望に浸りに来たわけじゃないのに
倒れている私の太ももに乗る崩れ落ちてきた板が重すぎて、身動きが取れない。
吹っ飛ばされた勢いで、出口のすぐ近くにまで来てるみたい。
火に負けじと対抗している、外からやってきたほんの少しの冷たい風のおかげでそれが分かった。
「行って...っ」
「でもお姉ちゃんが...」
「私はいいから!!
それとも焼け死にたいの!!?」
「...っ...」
「早く!!」
これ以上、炎も待ってはくれない。
突き放すような言い方で、男の子に逃げるよう叫んだ。
「...っ、」
くるりと私に背中を向けた男の子は
今にも喉から溢れ出してしまいそうな泣き声を堪えながら、走って煙の中に姿を消していった。


