激しさを増す炎のせいで、視界をぐるりと回してもすべてが赤で出来ていて。
これが本当に家だったのかさえ信じ難いくらい、私を惑わす炎は、遠慮なしに近づいてくる。
「ねえ!!いるなら返事してよ!!」
そう叫んでも、聞こえてくるのは明るさを増す火の音だけ。
早速外の空気が吸いたくなる。
でもこんな所で溺れてしまったらもう蘭君に会えない。
そんなの...絶対やだよ...っ。
泣いてる暇なんかないと、何回も何回も瞬きをして
まだ火に侵略されていない場所をひたすら探すと。
「...っ」
小さな影のような黒い物体が、震えながらしゃがみ込んでいた。
「きみ、大丈夫?」
すぐに駆け寄って、その肩に触れる。
振り向いた男の子が泣きながら私に抱きついてきた。


