「ごめ...っ、んな、さい」
「...」
「マフラーが...っ、なくなって、っ」
「...あ?マフラーならちゃんとあるじゃねーか」
ーーークイクイっと。今日借りたばっかりの蘭君のマフラーを、蘭君が触る。
首元に繋がれた首輪のように、そう簡単に緩まないマフラーは、なんだか余計私を悪人にさせる。
「これじゃない...前もらったマフラー...」
「あ...?ああ。
まあいいんじゃねーの」
「...へっ」
「別に、いらねーからあげたわけだ。
使おうが捨てようがなくそうがお前の勝手だ。
そんな事でいちいち泣いてたのか...お前」
「だって、私の大切な...」
「ならそれやる」
「...えっ」
「お前も新しいマフラーの方がいいだろ?
それ、やるから、いい加減泣きやめよ」
ーーーポンポンと、蘭君に頭を撫でられて。
冬の風で凍りそうな涙が、一瞬にして溶けてなくなったことを奇跡と呼んでみた。
でも、でもね、本当は。
何十回も蘭君に使用されてる、あのマフラーが恋しくて。
新品じゃ、全然首元暖まらないの。
これってワガママ...?
ううん、ただの恋だね。


