怒りたいのはこっちの方なのに。
聞こえてきた丸川さんの怒鳴り声が、ひどく私を混乱させて...
涙だって流すつもりなんかなかったのに、勝手に溢れてしまった。
「うわっ、こいつ泣いてるぜ?」
タバコを咥えながら私のことを笑う男が、1人、2人、3人。
おまけを付けて、丸川さんまで私のことを笑っていた。
ざまあみろって顔をしながら、真っ赤な口紅を塗ってる唇で、吸っているタバコに口付けをしていたんだ。
「...許さない」
「あ?」
「...マフラー...蘭君のマフラー返してよ!!!!」
ーーーガシャーーン!!!!と。
テーブルに置かれていたガラスコップが、中身と本体を床に撒き散らかした音だけは覚えている。
その後、どうやって逃げ切ったのかは覚えてない。
私に覆い被さる男の胸板を勢いよく押して、無我夢中で走って走って走ってーーーー。
あの人達が追いかけてきても、どんなに疲れる坂道でも、意識がないまま走った。
乱れた息をやっと整えることが出来たのは、カラスも静まる夜の公園でのこと。


