でも、そんな甘酸っぱい気持ちも永遠に続くなんてありえなくて。
走ったせいで、すぐに着いちゃったカラオケ店の前で立ち止まる。
下品に外まで音漏れした誰かの歌声が、妙に耳に突き刺さって
この場で吐いちゃいそうなくらい緊張が走った。
ドク、ドク、ドク。
刻んで、刻まれて。を繰り返す心臓の音が、無駄に意識までをも支配してーーーでも。
私は勇気を振り絞ってお店の中に入った。
すると、店員さんが私の顔を何度も確認しながら
「どうぞ」とそれだけ言って、部屋に案内してくれた。
...たぶん、丸川さんがこの店員さんに私が部屋に来たら通すように言ったんだろう。
状況を把握出来るくらい、不思議と冷静な自分がいてビックリだ。
ーーーコンコンコン。
3回ドアをノックして、ドアノブを掴んで深呼吸。
聴こえてくる嫌味なほどの無音が、余計私の緊張を煽る。
大丈夫
蘭君は、私の味方なんだから。
なにも怖がる必要なんかないんだ。
そう言い聞かせながら、ついにドアを開けた。


