「あの...」
「あ?」
「そろそろ退いてもらっても...いいかな?
私、授業あるんで...」
「...テメェ、なめてんのか?」
怖いけど、不思議と言い返せた。
どこかに冷静な自分がいる。
だってこの人、蘭君に会うために男の人に体を売ったって言ったけど。
そんなの...結局蘭君に会うための、自分の欲を満たしてるだけじゃないか。
蘭君に会いたいなら、自分から探さなきゃ。
意外と近くにいるもんだよ。
遠いと思うから、遠く感じてしまうのかも...ね。
...って、前の自分と重ねてみたり、なんて。
「言えよ...」
「...なにが、ですか?」
「もう百目鬼さんとは会わないって!!言えよ!!!!」
すぐ近くにあったガラスの破片を手に取って、彼女は天井に向かって大きくその手を上げた。
鼻息が荒い彼女が、冷静な判断なんかできるはずないと
さすがにこれには怯んじゃって、大げさに目を瞑った
けど。
「ーーーおい!!なにしてんだお前ら!!!!」
ーーーーガラッ!!!!
騒ぎを聞きつけ、観戦者を掻き分けて空き教室に勇敢に入ってきた先生が、眩しいくらいにかっこよく見えた。
...たっ、助かった...。
安堵して、ゆっくりと鼻息が漏れる。
冷静を装ってたけど、実は怖かったのが本音。
カッコつけたい時くらい、私にだってあるもん。


