「なんでお前がこれを持っている」
「...」
「...歩夢か?」
「...っ...」
「あいつに捨てろと渡したこれを、お前が持ってるってことは...お前らコソコソ会ってたな?」
「...」
「ふざけんなよ」
低い声で言われ、でも、引き下がることだけはしなかった。
「いつもペラペラよく喋るくせに。
こんな時だけ黙りかよ。
ほんっとウザイ女だな、お前」
今日の蘭君はいつもよりよく喋る方。
だけど、その言葉の数々は、私を簡単に傷つけ口を黙らせる。
せっかく上がってきた階段を、飛ぶように駆け下りる蘭が
目の前に広がる寒空の下にある川に、写真を投げた。
ーーーヒラヒラと。写真が川にゆっくり落ちて、沈んでいく。
彼はなにをそんなにムキになってるんだろう...。
写真って、記憶とは違って、形に残せる思い出なのに。
そんな簡単に
そんな辛そうな顔しながら
そんな呆気なく捨てちゃうなんて。
なんか...なんか。
それって、すっごく変だよ、蘭くん。


