【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。





私の決意を目だけで訴えると
歩夢さんはニッコリと笑って、それ以上はなにも言わなかった。


いつも嘘くさい笑顔なのに、今だけは本当の笑顔を私に見せてくれた歩夢さんに
私も応えるようにニッコリと笑い返した。





「前に集会やってた土手覚えてる?」


「忘れるわけないじゃないですか。
蘭君を庇ったつもりが、逆に蘭君が私を庇って怪我したところですよね...?」


「うん、そこに蘭はいるから。
ほら、さっさと行かないと王子様逃げちゃうよ〜?」



「ちょっ、茶化さないでください!!」




もう...歩夢さんってば、ほんっと時々意地悪になるんだから...っ。



でも私を茶化したのだって、少しでも私の緊張を和らげるためだって、ちゃんと分かってるよ歩夢さん。


さっきまでずっと緊張してて、会うのだって怖かったけど
今はもう蘭君に早く会いたくて、風で揺れてるマフラーをギュッと力強く握った。




ここから土手は遠いからと、わざわざ執事を呼んで車を出してくれる歩夢さん。



やっぱり何回乗っても慣れない高級車に乗り込むと
歩夢さんにお礼を言う暇もなくすぐにドアが閉まった。






「それじゃあ出しますね」



前の方から聞こえてきた、優しい優しい運転手さんの声。



私と運転手さんだけの車内は、なんだか気まずくて空気なんて吸えたもんじゃなかった。