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「ねえ彩羽、もういい加減諦めちゃえば?」
冬の屋上で寒さも気にせずお弁当を食べていたら、突然私の気持ちを簡単に口にする光花。
「諦めるって...そんな簡単に言わないでよ...」
少し不機嫌になりながら
箸で器用に取ったトマトが、口の中で潰れてじわじわと。舌に味を染み込ませる。
「だってあんた、そんな調子でずっと居続ける気?
いい加減にしなよ。俯いてばっかで話にもなんないし」
「だって...」
「あの男と何があったかなんて、私には関係ないことだけど。
あんたがそんな調子だと、こっちまで暗くなっちゃうんだからねっ!!」
「...みつか...」
「諦められないなら...前に進むしかないでしょ?」
「......」
光花に真剣な眼差しで見つめられ、ハッと我に返った。
光花の言う通り
あれから3ヶ月も経ってるのに、私ってばウジウジしてるだけで、なにも行動に起こさないんだから。
そりゃあ光花が怒ってもしょうがないと思う。
「ねえ光花...」
「なに?」
「もし、もしも。
私が蘭君になにかひどいこと言われたら、慰めてくれる...?」
口から箸を離して、弱気なことを言ってみたら。
光花は私の首に腕を回し、二カッと綺麗な歯を見せて、笑ってくれた。
「あったりまえでしょー!
慰めるのが親友の役目なんだからーっ」
「ふふっ...ありがとう」
「今まであんたが暗かったせいで、こっちまでテンションダダ下がりだったんだから。
お詫びにその唐揚げちょうだいよ」
「えーっ!?それとこれとは別だよー!!」
「うるさい!もーらい!!」
「もおー!!光花ったら〜!!」


