【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。






夜道を蘭君と歩くなんて、想像しただけでバクバクと、心臓が喜んじゃう。



「ねえ、私も行っていいかな...?」


「勝手にしろ。」


「うん...っ!」




絶対断られると思ったのに


今日の蘭君はちょっと変だ...。


すんなりしてるっていうか...いつもより攻撃的じゃないっていうか...。



「蘭君はアイスの味なにが好きなのー?」


「バニラ」


「蘭君バニラ派なんだー!!
私はチョコ〜」


「そうか」


「...」



今さっき出たばっかりの高級マンションに見下ろされながら、脚の長い蘭君に頑張ってついて行く。



何気ない会話がしたいだけなのに。


隣に居ても、隣を歩いても、すぐに気まずくなるこの関係...。





あれ...?


この1週間、わたし、蘭君となに話したんだっけ?



思い返すけど、楽しい思い出なんて1つもないような気がする...。




初めてあのマンションに泊めてもらったときは、蘭君の優しさが確かにそこにはあって。


ナンパ男に連れていかれたカラオケで起こった出来事を思い出して
恐怖で怯えて寝れない私と一緒に寝てくれた蘭君が今はもう懐かしい...。




やましい気持ちなんて一切ない...でも。



1回一緒に寝ちゃって覚えたあの温もりが...すっごくすっごく恋しい。



当たり前、彼氏彼女じゃないんだし
怪我してる蘭君が寝室を使って、私はリビングにあるソファで睡眠を取ってる。




なにかが物足りない。


欲しがってしまう、あの日あった優しさを。



恋をしてるのは私であって、蘭君は別に私のことなんかどうでもいいから...こんな事思っちゃダメなのに...。



触れたいと思ってしまうこの恋心は、欲張りですか?