それはなんとも苦しい言い訳だとアメリアは呆れさえしていた。

アメリアは貧乏な子爵家の出身ということで、他の令嬢から散々に嫌味も悪口も言われてきた。こんな風に理不尽に責められることにも経験がないわけではない。

逃げ出したくなるような状況でも冷静に相手を見ることができるというのは、その中でアメリアが培ってきた能力のひとつだった。


「アクレイド伯爵から推薦も受けていますわ。シアン様は今騎士団の仕事の方が忙しいだけです。落ち着けば、私がシアン様の婚約者になるのです」


いわば宣戦布告だった。

ミアは自分こそがシアンの隣に立ちたいと願って、ためにこれまで自分を磨いてきたのだろう。そして隣に立つのだと心から信じている。

それがミアの自信の根底にあるのだとアメリアは確信した。



「ミアどの、そう願っているのは貴女様だけではありません」



アメリアは拳を握って立ち上がった。


許嫁を失って、これからの出会いも絶望的で、騎士団の中で働く日々。

貧乏子爵であるミルフォード家の自分が、これ以上何を失うものがあるだろう。

今さら恐れるものなどない。


まっすぐミアの目を見据える。




「私もシアン様の婚約者になることを望んでいます」




願いを、言葉に。

思うだけでは、今言わなければ、この望みはきっと叶わないから。


「底辺貴族が!」


けれどアメリアの言葉を聞いたミアは目を見開いて苛立ちをあらわにした。