騎士団長のお気に召すまま

アメリアは気乗りもしない上、ドレスもアクセサリーもどうでもいいと思っていたのだが、ビス以外のメイド達はアメリアのその美貌と「年頃のお嬢様」の支度の世話にとても憧れていたようで、それは凄まじい熱の入りようだった。

ビスに助けを求めようとしたアメリアだったが、ビスは「お任せします」とメイド達に言うだけで一切アメリアの助けに応えようとはしない。

そしてアメリアがメイド達に囲まれて数時間後、ようやく解放される頃には、元から美しいアメリアではあるが比べものにならないほど美しいレディとなっていた。

その姿にメイド達は大満足の顔をし、「見た目だけならば、まあ、騎士団の名を穢すことはないでしょう」とシアンに言わしめるほどだった。アメリアは褒め言葉と受け取ることはできなかったが。

アメリアが身に纏ったドレスは澄んだ薄青のドレスだった。生地は上質なシルク、胸元には大小様々な宝石と刺繍が施され、とても豪華な仕上がりだ。

伯爵令嬢が主催するような高名な夜会に着ていくドレスを持たないアメリアのためにシアンが用意したもので、こんな上品なドレスは生涯で一度も着たことがない、とアメリアは感動さえ覚えた。


夜会の会場であるキャンベル邸へと向かう馬車の中、黙ったまま移り変わる窓の外を眺めているシアンにアメリアは声をかける。


「ドレス、ありがとうございました」


ドレスだけではない。靴もアクセサリーも、高価なものばかり。シアンがアメリアのために用意をしてくれたのだ。