騎士団長のお気に召すまま

「こちらでございます」と部屋を示す。

「本日より使用していただくアメリア様のお部屋でございます」


部屋は明るいベージュ色が基調となっていた。部屋の調度品は落ち着いた色合いのアンティークだ。

家具も高級なのが伝わってくるが、飾られている小物の数々も全てが実家で使っていたものとは異なる。数倍は高級なものだろうことは見た目にもよく分かった。


「こんなに、素晴らしい部屋を使わせていただけるなんて…」


あまりのすばらしさに圧倒されていると、ビスは「アメリア様のためにご用意したお部屋でございます」と頭を下げる。


「本当にありがとうございます」


アメリアは満面の笑みで頭を下げた。


「シアン様にもお伝えくださいませ」


するとビスは「かしこまりました」と頭をさげる。


「旦那様からは、日曜日の夜会までにマナーやしきたりの全てを教え込むよう申し付けられております。

日曜日まで時間がございませんので、お疲れのことと存じておりますが、さっそく本日より指導に入りたいと思っておりますので、どうかご了承ください」


そう切り出すと、ビスは早速アメリアに夜会のしきたりを教え始めた。

さすがはあのシアンに仕えているメイドだと思った。この厳しさは主人譲りだ。

みっちりと教え込まれ、「ここまでにしましょう」とビスが終わりを告げる頃には、アメリアはすっかりぐったりとしてしまった。


「このくらいで音を上げてしまわれるなんて」


ビスは信じられないとでも言いたそうに呆れたような表情をしたが、「何とでも言うがいいわ」とアメリアは反論する気にもなれなかった。