あまりの大きさに圧倒されていると、「アメリア様」とアメリアを呼ぶ声が聞こえてきた。

慌てて顔を向けると、そこにはメイドの姿があった。


「この屋敷でメイドを務めております、ビスと申します。

アメリア様のことは旦那様より申し付けられておりますので、なんでも申し付けくださいませ」


ビスと名乗ったその人は、切れ長の目に、風にそよぐ肩口ほどの金髪の、アメリアより４つは年上の落ち着いた女性だった。

けれど表情はあまり変化していないようで、それは主人とよく似ているとアメリアは思った。


「アメリア・ミルフォードと申します。しばらくこちらでお世話になります。よろしくお願いします」


礼儀正しく頭を下げるアメリアに、ビスはやはり表情を変えずに言う。


「長旅でお疲れになったことでしょう。お部屋の方へご案内いたします」


ビスの案内で屋敷の中を歩く。

屋敷の中は濃い茶色の木のぬくもりと白壁の色合いが落ち着いた雰囲気を醸し出しており、シアンらしいとアメリアは思った。


「素敵なお屋敷ですね」


前を歩くビスにそう声をかけると「そうでございますね」と返事をされたが、どこか心がこもっていないようでもあった。


「ビスさんは、シアン様によく似ていらっしゃいますね」


そう伝えると驚いたように振り返って、「そうでしょうか」と呟いた。

あまり変わらなかった表情が少し驚いた顔に変わって、ビスの心が見えたような気がしてふっとアメリアに笑みがこぼれる。


「とても素敵よ」


ビスは驚いたようにアメリアを見つめて、それからまた元の表情に戻る。