厄介なことになったと思っていたのだ。

兄であるアクレイド伯爵からは、早々にミルフォード家との婚約関係を破棄するように強く言われていた。

アクレイド伯爵家の基盤をより強くするために動いているアクレイド伯爵にとっては、ミルフォード子爵家など自身に利益を何も与えないどころか、損失をもたらす厄介なものにしか考えられないのだ。

シアンにとって当主たる兄の命令は絶対のもので、それを無視することは当主に反逆したということにもなる。安易に兄の言いつけを無視することはシアンにとってはできる限り避けたいことだ。


しかし、今目の前でアメリアが頭をさげている。見捨てるなと懇願している。


シアンはもう一度溜め息を吐き出して「…こういうのはいかがでしょうか」と提案した。



「ミルフォード家との婚約を考える代わりに、アメリア嬢、あなたには我が青の騎士団で働いていただくのです」



アメリアも父も目を丸くした。


「騎士団で、働く?」


シアンの話によると、青の騎士団は全員がひとつの基地の中で生活しているのだという。

所属する騎士が存分に役目を果たせるように、料理や掃除などの生活面を支える裏方が何人かいるのだが、どうやら欠員が出たらしい。


近々募集をかける予定でいたのだとシアンは言った。