騎士団長のお気に召すまま

アメリアが目を覚ますと、そこはランプがひとつあるだけで外の光の届かない場所だった。

(どこだ、ここ。)

体を起こそうとしてアメリアは気付いた。

縛られて手足を自由に動かせない。

あの男の仕業だとすぐに分かった。

あれだけレオナルドに気をつけるように言われていて、自分でも気をつけたつもりだったのに。

後悔しながらも、刺すような頭痛がしてあまり長くは考えられない。

原因はあの男の持っていた小瓶の中に入っていたものに違いない。

(あれのせいで頭が痛くなって、視界が揺れて、意識を失った。どれだけ眠っていたのだろう。)

考えても窓のないこの部屋では今が何時か、何日経ったのかさえも分からない。耳を澄ませても何も聞こえてこない。

ただ微かに潮の香りがする。

ということは海に近い場所ということだろうか。

それなら副団長か団員の人達が見つけてくれるかもしれない。

ほっと安心しかけた時、揺れた。

上下するその揺れはいつまでも続いて止まらない。

まさか、とアメリアは冷や汗をかいた。


「ここは、海の上?」


ここは船かもしれない。そうであるのならと考えれば考えるほど最悪の未来しか思い浮かばない。


『この男達は誘拐の常習犯です。最近このマリル港で頻発していた若い女性の誘拐・失踪に関わっていると考えられます』

『おそらく他国に売りさばいていたのでしょう』


以前マリル港に訪れた時のシアンの言葉が脳裏に響く。


「このまま、私は売り飛ばされる?」