騎士団長のお気に召すまま

十分に気をつけて待つようにもう一度言うと、レオナルドは家の敷地の中へと入っていく。

よい情報を得られますように、と祈っていると急に声をかけられた。


「よう、久しぶり」


それは黒いフードを目深に被った男性だった。

どこからか現れた男性は全身黒づくめで、白い壁と橙色の屋根で統一されたこの町の中では浮いて見える。


「え…どなたですか?」

「心外だな、もう忘れたのか? 薄情な奴だ」


アメリアは近づいてくる彼から離れようと距離を開けるが、それでも彼は近づいてくる。

この人は危ない。本能がそう言っている。


「探して、やっと見つけたんだ。ちょっと付き合ってもらうぞ」

「は?いやいや、そんなつもりないんですけど」


彼は懐から何か小瓶を取り出して蓋を開けた。

その瞬間アメリアの視界はぐわりと揺れ、立っていられないような頭痛と眠気が全身に走る。


「なに、これ…」


足元がふらつき、視界が揺れてだんだん不明瞭になってく。眠気がひどいのに、刺すような頭痛までする。


「少し眠ってもらうだけさ」


閉じていく視界の中で男性がそう笑ったような気がした。

寝てはだめなのに。

脳裏にシアンが浮かんで、アメリアは意識を手放した。