騎士団長のお気に召すまま

「はい!」

「お、いい顔だ。元気出たみたいだな。この調子で頑張ろう」


それからレオナルドはまた歩き出す。

この人の笑顔がきっと団員の力になるのだろうとアメリアは思った。

温かく包み込んでくれるこの笑顔に応えたいと思うからどんなに難しいことでも頑張ろうと思えるのだ。

それは、団長であるシアンも同じ。

団員にも厳しいけれど、何より自分に厳しいことは団員の皆が分かっている。だからこそ鍛錬を積み重ねて青藍の騎士と呼ばれるほどになったことも。

この人に認めてほしい。そう思わせてくれるのだ。


ただ貴族の令嬢として生きているだけでは、こんなにも魅力的な人々に、役に立ちたいと思える人々に出会えなかっただろうとアメリアは確信していた。

社交界の小さな世界で、世間のことも知らずに生きていただろうとも。


シアンに出会えたから、アメリアの世界は変わった。


他の令嬢の誰とも違う人生。

ただ家を救うだけなら、他の選択肢もあり得たのかもしれないと今になって思う。


けれど、それでも選んだこの道に後悔は微塵もない。


アメリアは前を見据えて一歩一歩確実に歩みを進めた。


しばらく歩いていると、家の敷地に漁の道具を置いてある民家を見つけた。

どうやらここがレオナルドが探していた民家らしい。


「ここの人なんだが、ちょっと頑固…いや、難しい人でな。悪いがちょっと待っててくれ」

「あ、はい!」

「すぐに戻る」