熊本地震。

私の人生史上(まだ短いけれども)、一番大きな災害。

新年度が始まり、当時学生だった私は、心機一転、新学期を迎えていた。


当たり前のように、お風呂に入っていたその時、外から声が聞こえた。


「大丈夫?何もない?」


母の声。

「え、何が?何もないけど」


この時、私は何があったのか、全くわからなかった。

というのも、お風呂(あるいはトイレ)は、地震が分かりにくい部屋なのだ。

この時刻に起きた地震は、一般に言う「前震」。熊本県内では、震度7を記録した。

長崎は、震度4とか5くらいだったと思うが、私は、お風呂にいたので、特に揺れを感じなかった。

お風呂から上がって、髪を乾かしていると、ぐらっと揺れる感覚に襲われた。

ドライヤーを止め、即座にしゃがみ込んで頭を抱えた。

洗面所は、なにかと物が多いため、棚などが倒れてくれば、体に当たることもある。

その頃、テレビでは、次々に地震速報が流れていた。

小さな地震がいくつも続き、不安だった。

リビングに家族全員で集まって寝た。

「明日の学校、休校にならないかな」なんて呑気なことを考えられていたのは、ここまでだった。


4月16日。

15日の夜中1時半ごろ。

ドドドド、という音と、とてつもない揺れの衝動に起こされた。

起こされたというか、飛び起きた。

考えることもなく、机の下に潜った。

机の脚に必死ですがりついた。

「怖いよ、嫌だよ」それを繰り返していた。

付けっ放しだったテレビからの緊急地震速報と、アナウンサーの声。

数台の携帯から一気に鳴る、緊急地震速報。

狂いそうだった。

息を潜めて、ただ、丸く縮こまっていた。



これが、「本震」と呼ばれることになる、熊本地震で、最も影響が出た地震だ。


本震がおさまってからは、特にそれといった地震は起こらなかった。

余震はちょくちょく起こっても、「あ、なんか揺れてるね」という程度に感じた。

学校も、地震が起きないかとヒヤヒヤしながら過ごしたが、何もなかった。

そして、普通の生活に戻っていった。


長崎は、ほんの少しの津波(東日本みたいなのではなく、水がチャプチャプながれるだけだったみたいです)と、その後の雨も重なって、土砂崩れが起きたくらいだ。

熊本に比べれば、全くといっていいほど何もなかった。