ピピピピッ…ピピピピッ…

一定の感覚で

聞き慣れた電子音が

微睡む頭に鳴り響く

「はぁ……」

ため息ではない

深呼吸だ

朝食を取りながらみる

慣熟しきった喋り方の人は

最近有名なYouTuberらしい

なんとなくで習慣になっているこの行動が

いい事かどうかは

私には分からない

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家を出るのは大体7時40分ぐらいだ

本来9時から始まる部活に

8時すぎに行くのはきっと私だけだろう

最近

洞察力を鍛える為に

毎日歩く道を観察することにした

あの人はいつもこの時間にいる

あの花は昨日にはなかった

果たしてこれは意味があるのだろうか

学校に着いたのは

いつも通り

8時すぎだった

いつもは先生が10分ぐらいに来て

鍵をくれるのだが

先生は来てくれるのだろうか

次第に人が集まってくる中

先生の車は現れない

20分になったところで

待ちきれず

鍵を取りに行った

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30分になり

音楽室にほぼ全員が集まった

「突然ですが、自分たちが楽しい演奏をするのか、お客様に楽しんでもらえる演奏をするのか、しっかり決めたいと思います」

先生に言われました



取って付けたように

後から付け足された言葉には

嫌悪感が滲み出ていた

目を伏せて多数決が取られた

「自分たちが楽しい演奏をしたい人」

明らかにトーンが低い部長の声など顧みず

服の擦れる音が

静かな教室に淡く木霊した

「多数決の結果、お客様に楽しんでもらえる演奏をしたい人が多かったので、先生にこの結果を伝えます」

小さなため息が

聞こえた気がした

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約3時間の練習を終え

最後のミーティングが始まろうとしていた



「暇があったら譜読みをしろ」

と言う先生の言いつけを守り

真っ赤なファイルを

睨みつけるように見ていた

宗教的で怖い

ファイルを持っていない人は

誰1人といなかった

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部活が終わり

解放された人達の顔には

疲労の色が見えていた

唯一の友達である子も

疲れたと呟いた

少し前まで

白い雲の隙間から見えていた青い空も

灰色の雲で覆われていた

透明で彩度の落ちた水の匂いだ

きっとこの後

雨が降る