わたしと専務のナイショの話

 貴方は何故、もう時効な話を今、始めるのですか。

 やはり、この人とは再会しなければよかったな、とのぞみは思っていた。

 無理やり、結婚しろと言われたときよりも。

 こんなところで、過去の悪事が露呈するとは……と思いながら、

「先生」
とのぞみは反論してみる。

「あのですね。
 生徒の立場から言わせてもらいますと。

 毎朝、出席番号順に名前を呼ぶの、やめていただきたいんですが」

 ずるいじゃないですか、とのぞみは訴える。

「坂下は早いんですよ。
 渡辺さんとじゃ、全然呼ばれる時間が違いますっ」

 名前を呼ばれたときに、はい、と言うのが間に合えば、遅刻扱いにはならなかったのだ。

 いや、せいぜい三、四分だろ、という顔を京平はするが、朝の三分は、他の時間帯の三時間に匹敵すると思う。

 もう二度と登校することもなければ、出席を取ることもないのに、延々と二人で揉めているうちに、最初は京平の登場に驚いていただけの母も正気に返ってきたらしく。

 そういえば、先生が専務になったのはわかったけど、何故、うちに? という顔をし始めた。