わたしと専務のナイショの話

「いや、迎えに来てくれるらしいよ」

 ……この言い方だと、なんかもう、相手が男の人だと告白した感じだな、とのぞみは思う。

 先手も後手もないな。

 この状況は将棋ではない。

 一方的に向こうばかり手を打ってきている感じだっ!

「あら……じゃあ、ご挨拶しなければね」
となにか含みがあるように、浅子が言ったそのとき、スマホから、

『今、目の前に、坂下という家があるんだが、此処か?
 番地は……』
と京平の声が聞こえてきた。

 どうやら、スピーカーで話しながら、運転してきていたらしい。

 貴方、行動早すぎですよっ、とのぞみは思う。

 この辺りに坂下は一軒しかないし、外からエンジン音が聞こえてくるので、京平の居る場所に間違いはないだろう。

 音の聞こえる車でよかった、なんとなく、とのぞみは思った。

 最近の電気自動車とかハイブリッドとかで、音もなく、ピンポンとか来られたら、怖すぎる。

 いや、どのみち、心構えなぞ出来てはいないのだが、と思ったとき、相変わらず行動の早すぎる京平は、
『チャイム鳴らすぞ』
と言いながら、もう、ピンポンと押していた。