わたしと専務のナイショの話

『出れそうか?』
と訊かれ、チラと浅子を窺う。

 浅子も、チラとこちらを見ていた。

 なにかの気配を察知しているらしい。

 親子のアイコンタクトというより、スパイが探り合っているような感じだった。

「誰か来られるの?」
と浅子が先手を打って訊いてくる。

 そう思ったせいか、
『先手、2六歩』
という将棋番組の音声が何故かのぞみの頭に蘇った。

 相当、動揺しているようだと自分で思った。

「せん……

 職場の人がちょっと。

 今から出られるかって」
とスマホの送話口を押さえて言おうとするが、電話機でないので、何処を押さえていいのかわからない。

 なんとなく、手のひらで全体的に押さえ込んでしまう。

 そんな怪しい動きを見た浅子は、ふーん、という顔をし、
「今から車で出るの?」
と訊いてきた。