「専務、昨日はどうもありがとうございました。
ところで、寝不足そうですね」
翌朝、専務室に行ったのぞみは京平が眠そうなのに気づいて、そう訊いてみた。
「ああ、あのあと、樫山の話が長くて」
とあくびを噛み殺しながら、京平は言う。
「えっ? 樫山さんとお話しされてたんですか?」
と驚いて訊き返してしまった。
あんなに仲悪そうだったのに、と思ったのだ。
「いや、ちょっとな」
と言う京平に首を捻りながらも、整理した郵便物を置いて出ようとしたとき、京平が、
「坂下、ありがとうな」
と言ってきた。
「え、なにがですか?」
とのぞみは振り返る。
その口調に、仕事のことではないような気がしたからだ。



