わたしと専務のナイショの話

「樫山、彼女を連れてくのに、何処かいい店はないか?」

 唐突にそんなことを言い出した自分に、樫山が、はあっ? と声を上げる。

「早苗とか詳しいだろ? そういうの。
 坂下が俺と結婚――」

 したくなるような、はまずいな。
 まだ、話が上手く進んでいないのがバレてしまう、と思い、京平は、

「坂下が俺と結婚して、幸せな一生を送りたいな、と思うような店を教えろ」
と言い換えた。

『そんな店あるのなら、こっちが知りたいわっ』
と怒鳴られてしまったが。

 だが、樫山は、
『……ちょっと待ってろ。
 今まで行って、早苗がいいって言った店のリストを送ってやる』
と言って電話を切った。

 ……同時期に結婚するような彼女が居る奴と思って、つい、樫山に、かけてしまったが。

 意外にいい奴だったな、と思い、京平は、暗がりでそこだけ明るく光るスマホを眺めていた。