走り去るのぞみの可愛らしいピンクの車を見ながら、京平は思っていた。
今日の計画では、キスくらいするつもりだったんだが。
なんか……できなかったな。
車に乗る前にちょっと、とか。
のぞみが発進する前にドアを開けてちょっと、とか思っていたのに。
なんでだろう。
できなかったな、とまた思う。
『で、では、ご馳走様でした。
今度、お礼に奢らせてください』
と頭を下げたのぞみを思い出す。
それだと意味がわからないと断ろうと思ったのだが。
のぞみと出かけられるチャンスをふいにすることもあるまいとそのとき思った。
よし、珈琲でも奢ってもらって、次は俺がなにか美味いものでも奢ってやろう。
何処かいい店はないだろうかと思ったとき、のぞみの車が右折して行くのが見えた。



