わたしと専務のナイショの話

 確か、この店の店主である彼は、
「す、すみません、聞いちゃいまして。

 ご結婚おめでとうございます。
 お祝いにこれ」
とプライベートに口を突っ込むまいとしていたのに、うっかり客の話に笑ってしまった詫びにかもしれないが、生牡蠣を二皿、もらってしまった。

 どうやら、この店の生牡蠣に、京平が狂喜していたのも聞こえていたようだ。

「あっ、ありがとうございます」

「ありがとうございます。
 すみません」
と二人で礼を言うと、はは、と笑いながら、店主は違う場所に行ってしまった。

 その広い背中を見ながら、のぞみは、

 ありがとう。
 これからも通います、大将っ。

 ついて行きますっ、と手を合わせた。

 いや、ついて来ないで、と思われていることだろうが……。