わたしと専務のナイショの話

 ご存知でしょう? 上司の人、と思うのぞみの前で、
「そう。
 俺はちゃんと今日のデートの計画を立ててたんだ」
と京平は、呑んでもないのに語り出す。

「一、お前に寿司を奢る。

 二、車で送ってキスをする」

 おい……。

「三、お前のご両親にご挨拶をする」

「えっ? もうですかっ?」
と思わず、のぞみは叫んでいた。

「当たり前だろう。
 結婚を前提にお付き合いしてるのに」

 ――してるんですかっ?

「それなのに、ご両親にご挨拶しないなんて失礼だろうっ。
 お前のような娘を一生懸命育ててくれた親御さんには、ちゃんとご挨拶しなければっ」

 すみません。
 その『お前のような』はどういう意味でおっしゃってるんですかね?

 お前のような立派な娘を?

 お前のような手のかかる娘を?

 絶対に後者だな、とこの元担任を見る。

 まあ、きっと私が手のかかる生徒だったからだろうが、と思ったとき、こらえきれなくなったように、目の前で素知らぬ顔で握っていた板前さんが笑い出した。