わたしと専務のナイショの話

 



 せっかく早く着いたのに。

 メッセージを入れても返事がないと思ったら、なに他の男といちゃついてるんだ、こらっ。

 京平は離れた位置から、楽しげに書架の前で話しているのぞみと祐人を見ていた。

 お前、俺と結婚するんじゃないのかっ。

 いやまあ、こっちが一方的に、それも別に好きだからというのでもなく、言っているだけなのだが。

 ……でも、お前、昔、俺にチョコくれたじゃないかっ。

『ハッピーバレンタインー!』
とかいう軽いノリだったがっ。

 だが、坂下の話によると、みんなも俺にチョコを用意していたのに、気後れして渡せなかったんだよな?

 てことは、あいつは、当時から、俺を舐めていたということか?

 なにせ、『ハッピーバレンタイン!』だからなっ。

 もらった当初はちょっと嬉しくて、のぞみの可愛らしい声で言われた『ハッピーバレンタイン』を思い出しながら、チョコを食べたりもしたものだが。

 今はそのセリフの軽い口調を思い出し、腹が立つ。