わたしと専務のナイショの話

「焦らず、ゆっくり行くから、緊張するな」

 ……はい、と言ったのぞみが、ホッとしたように強張っていた身体から力を抜いたとき、京平が耳許でぼそりと呟くのが聞こえてきた。

「……しめしめ」

「今、しめしめって言いましたーっ?」

「言ってないぞ」

「いや、言いましたよっ」
と逃げようとするのぞみを抱く手に力を込め、京平は言う。

「気のせいだ。
 さっき言ったじゃないか。

 焦る必要などないと気づいたと」

 そ、そうですか?
と思って逃げずに居ると、また、耳許で聞こえてくる。

「……しめしめ」

 やはり、言っているっ!
と思って見ると、京平は、しれっとして言ってきた。

「いや、今のはただの俺の心の声だ。

 夫婦らしく、お前に対して構えたところがなくなってきたから、思わず本音が漏れただけだ」

「余計悪いですーっ」